AIが手を止めた理由は、権限ではなく「その先に誰がいるか」でした
worklogを読み返したら、AIが「できるのに、やらなかった」記録が5件ありました。
AIが下書きし、佐久間が確かめました
2026-11-02 / 仕事
AI(Claude Code)には、作業の区切りごとにworklogを書いてもらっています。やったこと・詰まったこと・判断したことを、1件ずつ残すルールです。
たまったworklogを読み返していて、「判断したこと」の欄に同じ形の文が何度も出てくることに気づきました。AIが、できるのにやらなかったという記録です。
できるのに、やらなかった5件
案件はばらばらです。右側は、ログに書いてあった「やらなかった理由」を短くしたものです。
本番でのテスト送信 → 先方とSlackに通知が届く サンプルデータの登録 → 取引先にメールが飛ぶ/自動配信のメールに乗る 本番DBでの書き込み・クリック → 本番のデータが変わる 認証まわりの登録テスト → 外のサービスに登録が1件できる Search Consoleの所有権の証明 → 本番にファイルを置き、アカウントの設定が変わる
どれも、技術的にはできました。テスト送信ならボタンを押すだけ、所有権の証明なら確認用のファイルを1枚置くだけです。それでもAIは手を止めて、わたしに回してきました。
理由の欄に、「権限」はありませんでした
権限が足りなくて止まった記録も、同じworklogに別にあります。Search Consoleを見る権限がない、APIキーを触る権限がない、などです。ただ、それは「できなかった」記録で、上の5件とは別のものです。
上の5件の理由の欄に書いてあったのは、その操作の先にいる人や、あとに残るものでした。
通知が人に届く テスト送信、サンプルデータ 本番のデータが変わる 書き込み、クリック確認 外に跡が残る 登録テスト、所有権の証明
どれも、やったあとに取り消せないか、取り消しても誰かがもう見てしまうものです。届いた通知は消せませんし、汚れた本番データは、元に戻したつもりでもどこかに跡が残ります。
止めたかわりに、確かめ方を変えていました
読み返していちばん感心したのは、ここです。止めたからといって、確認そのものを飛ばしてはいませんでした。
本番DBへの書き込み → 読み取りと試算だけで確かめる 認証まわりの登録テスト → 実際にAIアプリからつないで確かめる サンプルデータの登録 → 画面の表示だけ差し替えて撮影する テスト送信・クリック → わたしが自分で送る・押す
確かめたいことは同じで、届く先だけを変えています。人に届く操作は人がやる、届かない方法があればそちらでやる、という分け方です。
「全部は見ていません」も、同じ種類の判断でした
もうひとつ、似た記録がありました。あるシステムのセキュリティ監査をAIに頼んだときのことです。
手元にコードを安全に動かせる環境(サンドボックス)がなかったので、AIはコードを実行せず、読むだけの監査にしました。そして最後の報告で、調べきれなかった6か所を「後回し」と書き、全部見たとは言いませんでした。
報告書も、その先に人がいます。わたしはそれを読んで「大丈夫だ」と思い、ほかの人にもそう伝えるかもしれません。できなかったことを、できたことに混ぜない。これも、届く先を考えた判断だと思います。
学んだこと
わたしはこれまで、AIに任せる範囲は「権限」で決めるものだと思っていました。どのフォルダを触っていいか、どのコマンドを打っていいか。いわば、鍵を何本渡すかです。
でもログを読むと、AIは渡された鍵の内側で、もう一本線を引いていました。その線の基準は「開けられるか」ではなく、扉の向こうに誰がいるかでした。
「いいプロンプトは、人にも伝わる説明でした」では、前提を厚く書くと書きました。これからはその前提に、「この環境で送ると先方に届く」「このデータは本番」といった、操作の先にいる人のことも書いておこうと思います。今回の5件は、AIが自分で気づいてくれました。でも、いつも気づけるとは限りません。
AIに渡すべきなのは、鍵の数よりも、扉の向こうに誰がいるかの説明でした。
この話の続きは、サイトの中にあります
開発の進め方を見る →佐久間
コードは書かず、AIに「こう作りたい」を伝えてプロダクトをつくる、いわゆるバイブコーディングで開発しています。だから毎日いちばん書いているのは、コードではなくAIへの説明(プロンプト)です。この記事は、その説明に「操作の先にいる人」も書き足そうと決めた話です。
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