AIに営業の報告を渡す前に、「確度」の意味を6行で決めました
最近よく聞くオントロジーを、うちの小さな例で言うと、こうなります。
CTO/COO 熊谷大樹が書きました
2026-10-14 / 仕事
今年、「オントロジー」という言葉をよく見るようになりました。7月にAWSが、業務の言葉をAIに渡すためのオープンソース(Context Ontology Accelerator)を出しました。Palantirはずっと前からこれを中心に据えていて、Microsoftも同じ方向です。
言葉は大げさに聞こえます。意味は、業務で使う言葉と、言葉どうしの関係を、機械が読める形で決めたものです。AIが業務で外すのは、モデルが賢くないからではなく、渡している情報に業務の意味が無いから——というのが、いま言われていることです。
うちの例は、表1枚です
社内に、営業の報告をAIに渡して台帳に書かせる仕組みがあります。営業は話した内容をそのまま伝え、AIが顧客ごとの記録を更新します。
渡す前に決めたことは、3つです。
顧客は 2種類 事業者(商材を導入する相手)/アポインター(人を紹介してくれる相手) 確度は 6段階 100 / 80 / 60 / 40 / 20 / 0 報告は 4項目 何を話したか/確度/契約までのハードル/ネクストアクション
そのうち、いちばん効いているのが確度の表です。
100% 成約 契約締結+初期費用の入金を確認した 80% 契約待ち 加盟の意思を明言し、契約書送付済み。締結日と入金日が決まっている 60% 条件合意 面談・審査を通過し、エリアと金額に合意。稟議などが進んでいる 40% 検討中 面談済みで前向きだが、資金・エリア・承認に未解決の論点がある 20% 接触済み 資料送付・初回接触まで。先方からのアクションはまだ無い 0% 失注 明確な断り、審査NG、または1か月連絡が取れない
右の列に、気持ちの言葉を入れていません
表の本体は、右の列です。見出しは「この事実があったら昇格」。「前向き」「好感触」「いい感じ」は、ひとつも入っていません。入っているのは、契約書を送った、入金を確認した、1か月連絡が取れない、という事実だけです。
AIは、確度を付ける前に必ずこの表を見る決まりです。人も同じ表を見ます。だから営業が「かなり前向きです」と報告しても、契約書を送っていなければ40%のままです。AIが厳しいのではなく、表が厳しい。そして表は、人が決めたものです。
顧客を2種類に分けた理由
事業者には、毎回「確度はいまどこか」を聞きます。アポインターには「誰を紹介してくれるか」を聞きます。聞くことが違います。
これを同じ「顧客」にしておくと、聞くことが混ざります。紹介してくれる人に確度を付けようとしたり、導入を検討している人に「誰か紹介してください」と言ったりする。言葉を分けるというのは、聞くことを分けるということでした。
学んだこと
オントロジーは、大きなシステムの話に聞こえます。でも、やってみて残ったのは表1枚でした。言葉の意味を決める仕事は、AIが来る前からあったはずの仕事です。AIが来て、決めていなかったことが見えただけです。
以前、AIに仕事を渡すにはマニュアルと道具がいる、と書きました。その前に、もうひとつありました。言葉です。マニュアルも道具も、言葉の意味が揃っていないと、揃っていない意味のまま速く動きます。
全社の言葉を一度に決めようとは思っていません。AWSのツールも、AIが下書きして人が承認する作りで、ひとつの業務から始めることを勧めています。うちは営業の確度から始めました。次は、別の表を1枚書くつもりです。
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